2015上半期読んだ本まとめ

 折角ブログも始めたんだしこういうまとめもやってみようかと思う。一応記録自体は読書メーター/鑑賞メーターでつけているのだが、必ずしも感想を記している訳ではないし、たまにはアウトプットでもしてみようかと。

 
 2015年上半期に読んだ本は38冊でした。少ない。映画を日常的に観るように意識するようになった時期と丁度重なるので相対的に読書量が減ってしまった。
 
 というわけで、印象に残った本いくつか。
 

 

世界史の中のパレスチナ問題 (講談社現代新書)
 

 

パレスチナ問題については何冊か本を読んで勉強してきたが、今の所これが決定版。タイトルに「世界史の中の」とある通り、各国の歴史の流れから多角的にパレスチナ問題に考察を加えているので詳しい上に分かりやすい(尤も幅広い知識を要求されるので山川世界史と首っ引きだった)。発行年も割合最近なので状況の変化の激しいパレスチナ問題の今を追うには最適の書なんじゃないかと。こういう本を読んでいると、世界史の中に他の事象と繋がっていない出来事など一つもないのだと実感させられる。そしてそれだけに解決は混迷を極める。昨今ますます情勢の悪化している中東地域だが、歴史的・文化的に見ても貴重な場所なので、早く収束に向かうと良いのだが。

 

 

ウォーレスの人魚

ウォーレスの人魚

 

  人魚伝説を軸に展開される壮大なSF大作。物語は頁を繰るにつれともすれば非現実的と呼べる方向に進行していくが、読者を捕まえて離さない抜群のリーダビリティと、虚構と現実の境界を埋めて溶かす科学考証が根底にあるので常に説得力を持ち、読みながら白けるということが全く無かった。物語は終盤に至っても収束するどころかどんどんスケールを増して膨張していき、読む者を圧倒させる。これは恩田陸の作品群を読んでも思うことだが、物語というのはなんでもかんでも風呂敷を畳めばいいわけじゃないのだ。しばしば小説より奇なりと形容される事実は瑣末でけち臭い伏線や全てが収まるべきところに嵌るパズルのピースとは無縁であり、寧ろどうあっても解明できぬ謎をかき抱いてこちらの手の届かない高みで私たちを見下ろして笑っている。全てを掌握できる世界なんぞつまらないと、こういう上手く結末を「投げた」フィクションに出会うたび実感する。

 

 

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

ロウフィールド館の惨劇 (角川文庫 (5709))

 

 

 再読。イヤミスの金字塔。冒頭一行から既に不吉。何度読んでも読後は力が抜けてしまう。ゴシックロマンとはつまり、その屋敷、その土地が持つ逃れられぬ運命の物語であり、登場人物たちはその掌の上で踊らされる哀れな傀儡に過ぎないのだ。
 

 

 

 

EPITAPH東京

EPITAPH東京

 

 

恩田陸の新刊は必ず買うと決めている。そんなわけで発売直後にうきうきしながら読んだ本。これが大当たり。小説ともエッセイともルポルタージュともつかない構造のこの本は、吸血鬼を名乗る謎の男の存在や、合間に挿入される作中作も相まって、恩田陸が東京という街を形容するのにしばしば用いる「モザイク構造」そのもの。土地からインスピレーションを得ることが多いという恩田陸ならではの作風で、東京へ行きたくなった。ふとした時に適当なページを開いて一章ずつ何気なく読み返しても楽しい。好みは分かれそうだが、私は大好きな本。

 

 

前田敦子の映画手帖

前田敦子の映画手帖

 

 

  AKB時代から応援している前田敦子さんのAERAでの連載をまとめたエッセイ。彼女に影響されて映画を観るようになったと言っても過言ではない自分にとっては大変タイムリーな本だった。「論じたいわけではなく、ただ浅く軽く好きでありたい」というのは何かのインタビューでの彼女の言葉だが、その言葉が象徴するように、知識人ぶった大上段からの評論ではなく、あくまでソフトな語り口で淡々と、しかし心底楽しそうに映画を紹介する文章は、良い映画を人と共有することの楽しさを実感させてくれる。映画を観るたび本書を読み返すだろう、読み返すたび映画を観るだろう、そう思わせてくれる良著。シンプルでさらっとした語り口ながら、映画の本質を捉えた的確な感想が多く、ああそういうことだったのか、とこの本を読んで改めて咀嚼できた映画も多い。

 

黄金の服 (小学館文庫)

黄金の服 (小学館文庫)

 

 

  山下敦弘監督が2016年に収録作『オーバー・フェンス』を映画化するということで手に取った本。閉塞された青春の只中のぬるま湯のような倦怠と痛みにヒリヒリしながら読んだ。しかしこのオフビート感、山下監督が映画化しないで誰がするんだって感じである。公開を楽しみに待ちつつ、彼の他の作品も手に取ってみようと思う。

 
 
他に読んだ本も全体的に当たりだったんですが特筆したいのはこのぐらい。下半期はもうちょっと色々読めるといいです。