薄味だが、決めるところは決めている─「引っ越し大名!」
「引っ越し大名!」を観てきた。以下感想を。
キャラクターの魅力も申し分なく、笑いどころも多々あり、及第点ではあるのだが、まず引っ越しするまでが長い長い。物を捨てたり借金したり人員削減したりと、色々やってはいるのだが、場面が変わらず絵的に地味なシーンがかなり続く。土橋章宏原作の映画作品というと「超高速!参勤交代」が記憶に新しいが、とりあえず移動しながら即興で策を練り、苦境を切り抜けていく様にドキドキさせられた「超高速〜」と比較すると本作はやはりあっさりした印象が否めない。
また、荷物を減らすべく書物の殆どを燃やすシーンがある。書庫番である主人公は何日も寝ずに本の内容を全て暗記するのだが、その知識が活かされるシーンが少ない。昔引っ越し奉行であった高畑充希の父の残した覚書のほうがよっぽど活躍する。折角だから伏線としてもっと魅せて欲しかった。
しかしやはり土橋章宏原作、人情要素がしっかりと配されており問答無用で満足感がある。様々な描写から主人公の情の深さ、折り目正しさが伝わってきたし、百姓の道を選んだ武士との会話や、15年の歳月の間で亡くなった同胞と共に陸奥へ至るシーンなど、締める所もきちんと締める。ここは本当に良かった。
星野源や高橋一生の好演もさることながら、高畑充希が本当に良い。彼女の演技はわりと目にする機会があるが、役によって全く違う顔を次々と見せる。今回も、目的のために女の武器も振りまいてみせるしたたかさがありながらも根が情に熱い女性を見事に演じていた。
楽しかったです。